平成21年秋期試験午後問題 問4

問4 システムアーキテクチャ

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Webシステムの構成に関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。
 J社は,K銀行の新Webシステム(以下,本システムという)を構築することになった。本システムは,利用者が1日24時間いつでも,インターネットから利用できることを目指している。そのため,非機能要件として,次に示すセキュリティ要件と可用性要件が提示された。

〔セキュリティ要件〕
 本システムの業務サーバ(Webサーバ,DBサーバ)に,利用者がインターネットから直接接続することは許さない。DMZを設け,利用者からのリクエストはDMZに配置した機器がいったん受け取り,適切な機器に転送する構成にする。また,利用者からのリクエストのプロトコルはHTTPとHTTPSだけを許可する。

〔可用性要件〕
 本システム全体でのハードウェアの可用性を,フォーナイン(稼働率99.99%以上)とする。
 これらの要件を満たすシステムとして,図に示す構成を考えた。利用者からのリクエストは,ロードバランサによって,いずれかのWebサーバに割り振られる。Webサーバは,DBサーバを利用して,リクエストにこたえる。
pm04_1.gif
 本システムで使用する機器の信頼性を表に示す。使用台数が2以上の機器は,どれか1台が稼働していれば,全体として正常に稼働するものとする。
pm04_2.gif

設問1

図及び表中のabの機器は,セキュリティ要件を満たすために必要な機器である。適切な機器名を解答群の中から選び,記号で答えよ。
a,b に関する解答群
  • IDS
  • RADIUSサーバ
  • VPN装置
  • ファイアウォール
  • プロキシサーバ
  • リバースプロキシ

解答例・解答の要点

a:
b:

解説

aについて〕
セキュリティ要件を満たすために必要な機器について解答を求められています。

〔セキュリティ要件〕を確認すると、次のようなことがわかります。
  • 「本システムの業務サーバ(Webサーバ,DBサーバ)に,利用者がインターネットから直接接続することは許さない。」
    ⇒インターネットから本システム用ネットワークに直接接続することができないようにする必要があります。ネットワーク同士の境界線に設置し、不正なデータの通過を阻止するファイアウォールによって実現可能です。
  • 「DMZを設け,利用者からのリクエストはDMZに配置した機器がいったん受け取り,適切な機器に転送する構成にする。」
    ⇒インターネットからDMZに直接接続して、DMZから本システム用ネットワークの機器に転送するリバースプロキシや、ロードバランサのようなリクエストを転送する装置で実現可能です。
  • 「利用者からのリクエストのプロトコルはHTTPとHTTPSだけを許可する。」
    ⇒プロトコルにより通過するパケットを制御する機能は、ファイアウォールによって実現可能です。
上記のような機器の候補を踏まえて、空欄を確認します。

aについて〕
図を確認すると、[a]の機器はインターネット、DMZのL2スイッチ、本システム用ネットワークに繋がるL3スイッチに接続しています。
このように用途が違うネットワークの間に設置し、かつ、インターネットへのアクセス及びインターネットからのアクセスを制限する機器は、解答群の中では「ファイアウォール」が適切です。

a=エ:ファイアウォール

bについて〕
DMZのL2スイッチに接続しています。
インターネットの利用者からのリクエストのプロトコルはHTTPとHTTPSだけを受け取り、本システムの業務サーバに転送する機器であることを満たす機器は解答群の中では「リバースプロキシ」が適切です。

b=カ:リバースプロキシ

その他の機器について簡単に解説しておきます。
IDS(Intrusion Detection System)
ネットワーク上の侵入を検知する仕組み。検知して管理者に通知するのみで侵入を防ぐことはできません
RADIUSサーバ
認証情報、認証手続および利用ログの記録(アカウンティング)のサービスを一元化して行うサーバ
VPN装置
多数の加入者が共用する公衆回線で接続された拠点間の通信において、認証及び暗号化と復号によって仮想的な専用回線を構築し、通信の安全性を確保するための装置
プロキシサーバ
内部LANからインターネットへのアクセスを代理する機器

設問2

表中のcに入れる適切な数値を答えよ。答えは小数第1位以下を切り捨てて,整数で求めよ。1年は365日とする。

解答例・解答の要点

c:24

解説

cについて〕
稼働率、MTTR、MTBFには以下の関係があります。
MTTR (Mean Time To Repair)
機器やシステムが故障で使用できない時間の平均
MTBF (Mean Time Between Failure)
機器やシステムが稼働している時間の平均
稼働率
MTBF÷(MTBF+MTTR)
DBサーバのMTBFである2年を時間単位に直しておきます。

 2年×365日×24時間=17,520時間

表の数値で計算すると、MTTRは次の式で求められます。

 0.9986=17,520÷(17,520+[c])
 0.9986×(17,520+[c])=17,520
 0.9986×17,520+0.9986×[c]=17,520
 0.9986×[c]=17,520-0.9986×17,520
 0.9986×[c]=(17,520×(1-0.9986))
 0.9986×[c]=17,520×0.0014
 0.9986×[c]=24.528
 [c]=24.5623…
(小数第1位以下を切り捨て)24(時間)

c=24

設問3

本システムの可用性について,(1)~(3)に答えよ。
  • 要求されている可用性要件を満たすためには,1年間に最長何分間までハードウェア障害によるシステム停止が許されるか。答えは小数第1位以下を切り捨てて,整数で求めよ。1年は365日とする。
  • 図及び表中のab,L2スイッチ,L3スイッチ,ロードバランサ,Webサーバ,DBサーバの単体での稼働率をそれぞれ p[1],p[2],p[3],p[4],p[5],p[6],p[7],各機器の台数を n[1],n[2],n[3],n[4],n[5],n[6],n[7] とした場合の,全体の稼働率を算出する式を解答群の中から選び,記号で答えよ。
    ここで,
    pm04_3.gif
    とする。
  • 可用性要件の充足に関する記述として適切なものを解答群の中から選び,記号で答えよ。
(2) に関する解答群
  • pm04_4a.gif
  • pm04_4i.gif
  • pm04_4u.gif
  • pm04_4e.gif
  • pm04_4o.gif
  • pm04_4ka.gif
(3) に関する解答群
  • 図及び表に示す機器構成で可用性要件を満たしている。
  • 図及び表に示す機器構成では可用性要件を満たしていないが,WebサーバとDBサーバを1台ずつ追加することで満たすことができる。
  • 図及び表に示す機器構成では可用性要件を満たしていないが,Webサーバを1台追加することで満たすことができる。
  • 図及び表に示す機器構成では可用性要件を満たしていないが,ロードバランサを1台追加することで満たすことができる。

解答例・解答の要点

  • 52


解説

  • 本システムに要求されている可用性要件は、フォーナイン(稼働率99.99%以上)です。逆を言えば、システムが停止している時間を0.001%以内に収めなくてはならないということです。

    1年を分単位に直すと、

     365日×24時間×60分=525,600分

    したがって、許容されるMTTRは、

     525,600分×0.0001=52.56分
    (小数第1位以下を切り捨て)52分

    ∴52

  • 図及び表中の機器全体の稼働率を算出する式を解答群の中から答えます。
    問題文中で「使用台数が2以上の機器は,どれか1台が稼働していれば,全体として正常に稼働するものとする」と記述があるため、同じ種類の機器は並列で稼働していることがわかります。図式化すると以下の構成です。
    pm04_5.gif
    並列部分の稼働率は「1-不稼働率」で求めます。例えば、L2スイッチは2台(=n[i])あり、稼働率が99.86%(=p[3])なので、この部分の稼働率を求める式は次のようになります。

     L2スイッチの稼働率=1-(1-p[3])n[3]

    p[i]とn[i]を使って表すと、i番目の並列部分の稼働率は、

     1-(1-p[i])n[i]

    各並列部分(1台はそのまま)を直列で繋いだのがシステム全体の構成なので、システム全体の稼働率は以下のように求めることができます。

     ファイアウォールの稼働率×リバースプロキシの稼働率×L2スイッチの稼働率×L3スイッチの稼働率×ロードバランサの稼働率×Webサーバの稼働率×DBサーバの稼働率
    =(1-(1-p[1])n[1]))×(1-(1-p[2])n[2]))×…(中略)…×(1-(1-p[7])n[7]))

    これを相乗積(Π)を使って表した「カ」の式が適切です。

    ∴カ:pm04_4ka.gif

  • 可用性要件、すなわちフォーナイン(稼働率99.99%以上)の充足について解答を求められています。

    問題文中の表で、各機器の単体の稼働率と使用台数を確認すると、ロードバランサが使用台数1台にもかかわらず稼働率99.93%となっています。他の機器とは直列に接続されているので、これだとシステム全体の稼働率は常に99.93%以下にしかなりません。したがって、フォーナイン(稼働率99.99%以上)を達成するためには、予備のロードバランサを追加しなければなりません。実際にロードバランサを1台追加すると、ロードバランサとしての稼働率は99.999951%まで向上します。

    ∴エ
模範解答

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