応用情報技術者過去問題 平成26年春期 午後問11

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問11 システム監査

プロジェクト管理の監査に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。

 S社は,店舗及びインターネットで日用品などの販売を行う企業であり,決算期は3月である。S社では,近年,新規の情報システムの開発,既存の情報システムの大規模改修などのプロジェクトにおいて,リリースが大幅に遅れたり,予算を大幅に超過したりする事態が発生している。また,完成した情報システムに対する利用部門の満足度が低く,一部には,あまり利用されていない情報システムもある。
 経営陣は,これらの問題が少なからず事業計画に悪影響を与えていると考え,監査部に対して,情報システム開発の重要なプロジェクトについて監査を実施するように指示した。
 経営陣の指示を受け,監査部長は,プロジェクト管理を2014年度の年度システム監査計画において重点監査テーマとして位置付けた。そして,その監査目的を"個々のプロジェクトにおいて,プロジェクト管理が適切に行われているかどうかを確認し,予算及び,スケジュールの遵守,並びに品質の確保に寄与すること"にした。
 監査は,プロジェクト管理の監査経験のあるT君をリーダとし,担当者1名を加えた2名体制で実施することになった。

〔事前調査の実施〕
 T君は,今回の監査計画の策定に当たって,2014年度に開始又は継続している情報システム開発のプロジェクトの概要及び,その進捗状況について調査した。各プロジェクトの概要,及び調査を実施した2014年3月10日時点の進捗状況は,表1のとおりである。
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〔監査計画の立案〕
 T君は,調査結果を踏まえ,次のような監査計画を立案した。
  • 監査期間は,2014年4月〜2015年3月末とする。ただし,2015年3月末以降に終了するプロジェクトを監査対象とする場合には,プロジェクト終了までを監査期間とする。1回目の監査は,2014年4月中旬に実施し,その後,約3か月ごとに実施する。
  • 監査対象とするプロジェクトは3件とする。店舗POS端末システムの改修及び経営情報システムの新規構築のプロジェクトについては,今回の監査目的を踏まえて優先度が低いと判断し,対象外とする。
  • 主要な監査項目は,次のとおりとする。
    1. プロジェクト体制は適切か。
    2. プロジェクトの進捗管理,予算管理は適切か。
    3. プロジェクトの品質管理は適切か。
  • 監査方法は,主に各プロジェクトの進捗状況に応じて作成される関係文書の閲覧と,プロジェクトリーダをはじめとするプロジェクトメンバ及び利用部門の担当者へのインタビューとする。
〔実施した監査の内容と主な発見事項〕
  • 実施した監査の内容
     T君は,2014年4月中旬に1回目の監査を実施した。監査は,各プロジェクトの進捗状況から次のような内容であった。
    1. インターネット販売システムの再構築及び財務会計システムの再構築のプロジェクト計画書については,策定の体制,方法を含めた内容の適切性を確認した。
    2. 物流システムの改修のプロジェクト計画書及び要件定義については,策定の体制,方法を含めた内容の適切性を確認した。
  • 主な発見事項
    1. インターネット販売システムの再構築プロジェクトの目的は"システム性能,稼働率,安全対策の向上"とあったが,利用部門の担当者にインタビューを行ったところ,操作性の改善など機能の向上についても多くの要望があることが分かった。
       また,経理部門の複数の担当者にインタビューを行ったところ,財務会計システムの再構築プロジェクトの目的である決算早期化を実現するためには,システム対応に加えて業務の大幅な見直しが必要であることが判明した。しかし,プロジェクト計画書には,その内容やスケジュールについて記載がなかった。
    2. 物流システムの改修のプロジェクトについて,最新スケジュールを確認したところ,要件定義は終了している予定であるにもかかわらず,実際にはほとんど進んでいなかった。プロジェクトリーダに理由を確認したところ,利用部門の担当者が多忙であり,ほとんど打合せに出席できていないとのことであった。また,プロジェクトリーダによれば,当初のスケジュールどおりにプロジェクトを完了するのは難しいとのことであった。

設問1

〔監査計画の立案〕の(2)で,二つのプロジェクトについて,優先度が低いと判断した理由をそれぞれ25字以内で述べよ。

-解答入力欄-

  • POS端末システムの改修:

  • 経営情報システムの新規構築:

-解答例・解答の要点-

  • POS端末システムの改修:
    プロジェクト期間が短く,工数も少ないから (20文字)
  • 経営情報システムの新規構築:
    既にプロジェクトが終了しようとしているから (21文字)

-解説-

プロジェクトの監査実施要否についての設問です。

T君が「店舗POS端末システムの改修及び経営情報システムの新規構築のプロジェクトについては,今回の監査目的を踏まえて優先度が低いと判断し,対象外とする」と判断した理由について解答します。

監査目的については問題前文に「個々のプロジェクトにおいて,プロジェクト管理が適切に行われているかどうかを確認し,予算及び,スケジュールの遵守,並びに品質の確保に寄与すること」と記載されています。
また同じく問題全文に「経営陣は,…監査部に対して,情報システム開発の重要なプロジェクトについて監査を実施するように指示した」と記載されています。

店舗POS端末システムの改修及び経営情報システムの新規構築のプロジェクトは、この内容にそぐわないものであったため、監査対象外となったものと判断できます。

各プロジェクトの特徴は表1に記載されているので、これを読み取って適切な理由を考えます。

【POS端末システムの改修について】
表1を見ると、"予定のプロジェクト期間と工数"が「2014年4月〜2014年7月末 約30人月」となっています。実施期間が4か月間、投入される要員も月当たり平均10人未満なので他のプロジェクトと比較して小規模な部類であることがわかります。

通常、スケジュール遅延や予算の超過などのプロジェクト管理上の問題は、プロジェクトの規模が大きくなればなるほどその発生確率は高くなります。「店舗POS端末システムの改修」のようなプロジェクト期間が短く、工数も少ないプロジェクトではこれらの問題が発生しにくく、監査を実施したとしても今回の監査目的にそれほど寄与しないと考えられます。
また、S社で問題となっているのは「大規模改修」であり、経営陣からは「重要なプロジェクト」について監査を指示されているので、プロジェクト期間が短く、工数が少ない本プロジェクトの優先度は低いと考えられます。

∴プロジェクト期間が短く,工数も少ないから

【経営情報システムの新規構築について】
〔監査計画の立案〕によれば、監査期間は「2014年4月〜2015年3月末」ですが、表1を見ると、本プロジェクトの"予定のプロジェクト期間と工数"は「2013年3月〜2014年4月」となっています。

「プロジェクト管理」という監査テーマおよび「プロジェクト管理が適切に行われているかどうかを確認」するという監査目的を踏まえれば、監査を行うのはプロジェクト終了時までですから、本プロジェクトを監査対象とした場合、監査期間はわずか1カ月間だけということになります。そして1回目の監査が実施されるのは4月中旬です。監査報告書が作成・提出されるのはそれよりさらに後になりますから、監査によって本プロジェクトの管理面に影響を与え、監査目的である予算・スケジュール及び品質の改善に寄与することはスケジュール的に困難です。つまり、本プロジェクトは終了直前であるために優先度が低いと判断されたと考えられます。

∴既にプロジェクトが終了しようとしているから

設問2

主な発見事項の①の内容について,〔監査計画の立案〕の(3)に記述されている監査項目①の観点から,T君が指摘事項として監査報告書に記載すべき事項を35字以内で述べよ。

-解答入力欄-


-解答例・解答の要点-

  • プロジェクト計画の立案において利用部門の参画が十分でない (28文字)

-解説-

監査報告書に記載すべき指摘事項について解答する設問です。助言型の監査では、監査報告書に指摘事項と改善提案(改善勧告)を記載することになりますが、設問で問われているのは「指摘事項」ですので改善提案を解答しないように注意しなければなりません。

この設問では主な発見事項の①の内容について問われているので、該当箇所を確認すると、
  • 利用部門の担当者にインタビューを行ったところ,操作性の改善など機能の向上についても多くの要望があることが分かった。
  • 経理部門の複数の担当者にインタビューを行ったところ,財務会計システムの再構築プロジェクトの目的である決算早期化を実現するためには,システム対応に加えて業務の大幅な見直しが必要であることが判明した。
という記述があります。これらの記述により、利用部門の要望や課題がプロジェクトの目的やプロジェクト計画書に正しく反映されていないことが読み取れます。よって、この問題点について監査項目①の観点、すなわち「プロジェクト体制の適切性」の観点から述べることになります。

通常、プロジェクトには利用部門からも要員を参画させることで、要件定義やプロジェクト計画において業務知識を踏まえた広い意見を取り込み、実際の業務に役立つシステムとなるようにプロジェクトを導く必要があります。監査対象のプロジェクトでは、このような利用部門の参画が十分でないため、発見事項①のような問題点が発生したと考えられます。

したがって、指摘事項としては「プロジェクト計画の策定に利用部門が十分に参画していない」、「プロジェクト計画策定に対する利用部門の関与が不十分」等の解答が適切となります。模範解答は「プロジェクト計画の立案において利用部門の参画が十分でない」となっています。

∴プロジェクト計画の立案において利用部門の参画が十分でない

設問3

主な発見事項の②の内容について,〔監査計画の立案〕の(3)に記述されている監査項目②の観点から,T君が改善提案として監査報告書に記載すべき事項を35字以内で述べよ。

-解答入力欄-


-解答例・解答の要点-

  • 早急にスケジュールを見直して,経営陣の承認を得ること (26文字)

-解説-

監査報告書に記載すべき改善提案について解答する設問です。

この設問では主な発見事項の②の内容について問われているので、該当箇所を確認すると、
  • 物流システムの改修のプロジェクトについて,最新スケジュールを確認したところ,要件定義は終了している予定であるにもかかわらず,実際にはほとんど進んでいなかった。
  • プロジェクトリーダによれば,当初のスケジュールどおりにプロジェクトを完了するのは難しいとのことであった。
という記述があります。これらの記述により、監査対象のプロジェクトは大幅に遅延しており、スケジュールどおりにプロジェクトを完了できない状況に陥っていることが読み取れます。しかし、表1では本プロジェクトは"スケジュール通り"とされており、進捗状況にプロジェクトの実態が反映されていません。よって、この問題点について監査項目②の観点、すなわち「プロジェクトの進捗管理・予算管理の適切性」の観点から改善点を述べることになります。

通常、プロジェクトが遅延してスケジュール通りに完了できない場合、スケジュールを見直し、作業計画を再作成する必要があります。また、スケジュールを延長することで工数が増加し、当初計画していた予算を超過する可能性があります。プロジェクトへの変更要求は、あらかじめ定められた変更管理の手順に従って受け付けられ、レビューされ、承認されます。本プロジェクトは経営陣の承認を受けスタートしているので、プロジェクト計画変更の際にも経営陣の承認を得る必要があります。

よって、正解は「早急にスケジュールを見直して,経営陣の承認を得ること」となります。

∴早急にスケジュールを見直して,経営陣の承認を得ること

なお、主な発見事項の②の「プロジェクトリーダに理由を確認したところ,利用部門の担当者が多忙であり,ほとんど打合せに出席できていないとのことであった。」という記述から、「利用部門の担当者に打ち合わせに出席するように要請する」という方向性の解答も考えられるかもしれません。しかし、この解答はプロジェクトの進捗管理、予算管理の観点を踏まえておらず、設問の「〔監査計画の立案〕の(3)に記述されている監査項目②の観点から」という条件を満たしていないので不適切です。一般的なシステム監査についての知識に加えて、設問の要求を理解する力が求められる問題と言えるでしょう。
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