応用情報技術者過去問題 平成23年特別 午後問1

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問1 経営戦略

業務のアウトソーシングに関する次の記述を読んで,設問1〜4に答えよ。

〔P社の概要〕
 P社は,家具の製造・販売を行っている企業で,シンプルなデザインで使い勝手が良い家具を,手ごろな価格で提供することを特徴にしている。首都圏に14店舗を展開しており,低コストでの製造を強みにしている。現在の販路は店舗販売だけで,店舗のほかに小規模なコールセンタをもっている。コールセンタでは,顧客からの照会・要望・クレームを受け付けているものの,通販は行っていない。コールセンタで得た情報は,一定期間ごとに取りまとめて仕分けされ,必要に応じて,各担当部署に伝達される。コールセンタは自社の要員で運営しており,比較的有能な人材を配置している。コールセンタで使用している設備は自社で所有しており,管理会計上の運営コストは,人件費と設備の減価償却費である。
 P社は,店舗販売に限定されている現在の販路を拡大するために,電話による通販とインターネットによる通販を始めることにした。ただし,商品を直接確かめてから購入したいという顧客が多いことから,通販開始後も,主たる販路は店舗販売であることに変わりはないと考えている。P社は,急速に規模を拡大し,人材が恒常的に不足しているので,通販を始めるに当たって,コールセンタ業務のアウトソーシングを検討することにした。コールセンタでは,これまで行っていた業務に加えて,電話による通販の受付業務を新たに実施することになる。インターネットによる通販が増加してきたら,電話による通販の停止を検討したい。

〔検討過程〕
 P社では,アウトソーシング導入の検討手順を,次のように設定した。
  • 自社のビジネスモデルを再確認して,コアコンピタンスを明確化する。
  • アウトソーシングのメリット・デメリットを比較する。
  • アウトソーシングの形態を検討する。
  • 品質・競争力を維持する方法を検討する。
  • アウトソーシング委託先の選定方法を検討する。
〔ビジネスモデルの再確認とコアコンピタンスの明確化〕
 自社のaとコアコンピタンスを明確化するために,SWOT分析とbを実施した。まず,SWOT分析では,自社の強み・弱みなどを,次のように結論付けた。
 強み:低コスト製造技術と体制,自己資本比率の高さ
 弱み:人材不足,自社店舗に限定される販路
 機会:消費者の低価格志向の強さ
 脅威:同様の強みをもった企業の参入
 また,業界の競争状態を分析することによって,その業界の収益性や魅力の度合いを測定するbを行い,自社のビジネスモデルの有効性を確認した。
 これらの分析から,P社は,自社のaとコアコンピタンスを,次のように明確化した。

a:シンプルなデザインで使い勝手が良い家具を,首都圏の中流家庭に,手ごろな価格で提供する。
コアコンピタンス:低コストで製造する技術と体制をもっていること

〔アウトソーシングのメリット・デメリットの比較〕
 コールセンタ業務をアウトソーシングすることによって,①様々な効果を得ることができる。アウトソーシング委託先で訓練済の人員や運営ノウハウを活用することによって,早期にcできるというメリットも享受できる。
 デメリットとしては,コールセンタの運営ノウハウを蓄積し,独自の工夫を加えることを実施しにくい点が挙げられる。
 P社では,自社のビジネスモデルとアウトソーシングのメリット・デメリットに関する分析,及び自社におけるコールセンタの位置付けから,アウトソーシング導入の可否を検討した。その結果,②想定されるデメリットによって,自社の経営に大きな影響をもたらすことはないと判断した

〔アウトソーシングの形態〕
 アウトソーシングの形態を次の三つに大別して,自社に適した形態を検討した。
完全委託
設備を含めて,すべての業務を一括して委託する。
部分委託:
設備はアウトソーシング委託先のものを使用するが,業務の一部については自社の要員で賄う。
運営委託:
設備は自社で構築し,業務の運営はアウトソーシング委託先に任せる。
 コールセンタには,顧客満足度を向上させることによって販売促進を図るという重要な役割が求められる。具体的には,③商品購入へのアドバイス,照会への迅速な回答などである。これらの活動の充実を図り,かつ,アウトソーシングのデメリットを軽減するために,コールセンタ要員の一部に自社要員を充てる部分委託の形態を採用した。
 P社では,通販開始に伴うコールセンタの追加要員のすべてを自社の要員と仮定した場合,コールセンタに必要な人件費が現在の2倍になると見積もった。これに基づいて,アウトソーシング委託先に支払う人件費を現在の人件費の2.2〜2.5倍と想定した。これに設備使用料を考慮して,コールセンタに掛かる委託料の総額を折衝する。想定されるコスト増は,自社の経営に影響を与えるほどではない。また,アウトソーシング委託先とは1年ごとの契約とし,契約条件は毎年見直せるようにする。

〔品質・競争力の維持の方法〕
 コールセンタ業務の品質と競争力を維持するために,同業又は類似の業態における実績のあるアウトソーシング委託先を選定する。その上で,相互の役割分担や指揮命令系統を明確にし,アウトソーシング委託先の運営ノウハウを生かしつつ,品質と競争力の維持を実現する体制を構築する。これらに対する保証を得るために,達成すべき指標を数値化し,dを締結する。

〔アウトソーシング委託先の選定〕
 アウトソーシング委託先の選定に当たっては,まず候補先をリストアップして一覧を作成する。次に実施可能なサービス内容や過去の実績などの情報を提供してもらうために,eを作成して提示する。eに対する回答を参考にして提案依頼書を作成し,具体的な提案を依頼する。最後に,提出された提案を審査し,最終的なアウトソーシング委託先を選定する。

設問1

本文中のabdeに入れる適切な字句を解答群の中から選び,記号で答えよ。
a,b,d,e に関する解答群
  • 3C分析
  • PPM
  • RFI
  • RFP
  • SLA
  • 事業ドメイン
  • 守秘義務契約
  • バリューチェーン

-解答入力欄-

  • a:
  • b:
  • d:
  • e:

-解答例・解答の要点-

  • a:
  • b:
  • d:
  • e:

-解説-

aについて〕
P社の[a]の定義として「シンプルなデザインで使い勝手が良い家具を,首都圏の中流家庭に,手ごろな価格で提供する。」とあり、これを抽象化すると「何を、どこに、どうする」であることがわかります。このように自社や事業の取組範囲・展開範囲を示す概念を、領域(ドメイン)といいます。経営戦略策定の前提として事業ドメイン設定は重要と言えます。

a=カ:事業ドメイン

bについて〕
本文中に「業界の競争状態を分析することによって,その業界の収益性や魅力の度合いを測定する」とあります。これには、ファイブフォース分析が該当します。ファイブフォース分析は、業界の収益性を決める5つの競争要因から、業界の構造分析をおこなう手法のことです。「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」「既存企業間の競合関係」という3つの内的要因と、「新規参入業者の脅威」「代替品の脅威」の2つの外的要因、計5つの要因から業界全体の魅力度を測ります。
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b=ケ:ファイブフォース分析

dについて〕
本文中に「これら(品質と競争力の維持)に対する保証を得るために,達成すべき指標を数値化し,[d]を締結する。」とあることから、アウトソーシングの際の、サービスの品質に関する取り決めであることがわかります。これには、SLAが該当します。SLA(Service Level Agreement)は、提供者と顧客の間でサービスの品質に関して結ぶ契約のことで、サービスの品目と水準、および水準を達成できなかった場合のペナルティ事項などが盛り込まれます。

d=オ:SLA

eについて〕
[e]を作成する目的は、「実施可能なサービス内容や過去の実績などの情報を提供してもらうため」です。この例のように組織がシステム調達や業務委託をする場合や、初めての取引となるベンダ企業に対して情報の提供を依頼する文書を、一般的にRFI(Request for Information,情報提供依頼書)と呼びます。RFIを発行することによって相手方が保有する技術・経験や、情報技術動向、及び導入予定のシステムが技術的に実現可能であるかなどを確認することができます。この情報は要件定義や発注先候補の選定に利用できます。その後、自社の要求を取りまとめたRFP(Request for Proposal,提案依頼書)が発注先候補に対して発行されることになります。

e=ウ:RFI

設問2

本文中の下線①の記述のとおり,P社においては,コールセンタ業務をアウトソーシングすることによって様々な効果が得られる。P社が得られる効果として,適切なものを解答群の中から二つ選び,記号で答えよ。
解答群
  • コールセンタ業務に掛かる人件費を,自社で運営する場合よりも低減させることができる。
  • コールセンタの縮小や廃止を円滑に実施できる。
  • 自社人材の有効活用を図ることができる。
  • 自社要員の削減を支障なく進めることができる。
  • 変動費を固定費に変更することができる。

-解答入力欄-

-解答例・解答の要点-

-解説-

アウトソーシングをする目的について問われています。
  • 一般的には人件費の低減を見込んでアウトソーシングを実施することがありますが、必ずしもそうとは限りません。本文中に、すべてP社要員で賄うときに現在の2倍、それをアウトソースすると2.2〜2.5倍とあるので、人件費の低減にはなりません。
  • 正しい。P社は「インターネットによる通販が増加してきたら,電話による通販の停止を検討したい。」と考えています。アウトソーシングの場合は自社での人員削減や、配置最適化などを検討する必要がなく、円滑に縮小及び廃止が可能であると考えられます。
  • 正しい。本文より「コールセンタは自社の要員で運営しており,比較的有能な人材を配置している。」とあります。しかし、コールセンタの業務はノンコア業務であることから、有能な人材の能力を最大限発揮できる環境とは言えません。これをアウトソーシングすることによって、有能な人材をコア業務に集中させることが可能になります。
  • 一般的には、アウトソーシングをする目的に含まれます。しかし「P社は,急速に規模を拡大し,人材が恒常的に不足している」とあることから、本件では自社要員の削減を目的としていません。
  • 記述とは逆で、アウトソーシングした場合は、固定費が変動費になります。
∴イ、ウ

設問3

本文中の下線②の判断に至った理由を,〔ビジネスモデルの再確認とコアコンピタンスの明確化〕の記述を参考にして,40字以内で述べよ。

-解答入力欄-


-解答例・解答の要点-

  • ・アウトソーシングが,コアコンピタンスの喪失にはつながらないから (31文字)
    ・自社のコアコンピタンスは,低コスト製造技術と体制をもっていることであるから (37文字)

-解説-

「想定されるデメリットによって,自社の経営に大きな影響をもたらすことはないと判断した。」理由を、〔ビジネスモデルの再確認とコアコンピタンスの明確化〕の記述を参考にして答える必要があります。

まず、アウトソーシングした場合、どんなデメリットがあるかを確認します。〔アウトソーシングのメリット・デメリットの比較〕の2段落目には「デメリットとしては,コールセンタの運営ノウハウを蓄積し,独自の工夫を加えることを実施しにくい点が挙げられる。」とあり、これが想定されるデメリットにあたります。

次に、このデメリットが、なぜ自社の経営に影響がないと判断できるのかを考えます。〔ビジネスモデルの再確認とコアコンピタンスの明確化〕には、強みとして「低コスト製造技術と体制,自己資本比率の高さ」、コアコンピタンスとして「低コストで製造する技術と体制をもっていること」とあります。コアコンピタンスとは、長年の企業活動により蓄積された他社と差別化できる企業独自のノウハウや技術のことです。

アウトソーシングによるデメリットは、市場競争力の源となるコアコンピタンスの喪失につながるものはないので、直ちに経営に大きな影響を与えることはないと考えられます。

∴アウトソーシングが,コアコンピタンスの喪失にはつながらないから
 自社のコアコンピタンスは,低コスト製造技術と体制をもっていることであるから

設問4

コールセンタでの業務について,(1),(2)に答えよ。
  • 本文中のcに入れる適切な字句を20字以内で答えよ。
  • コールセンタが,顧客満足度を向上させることによって販売促進を図るという役割を果たすためには,本文中の下線③以外に,もう1点実現すべき活動が考えられる。コールセンタで得た情報を活用するのに必要な活動を,本文を参考にして,40字以内で述べよ。

-解答入力欄-

    • c:

-解答例・解答の要点-

    • c:電話による通販の受付業務を開始 (15文字)
    • 顧客からの照会・要望・クレームなどの情報の担当部署への速やかな伝達 (33文字)

-解説-

  • cについて〕
    ここに入る内容は、「アウトソーシング委託先で訓練済の人員や運営ノウハウを活用することによって,早期に」実現できるメリットです。

    そもそも、コールセンタ業務をアウトソーシングする目的は、「販路を拡大するために,電話による通販とインターネットによる通販を始めること」にあります。本文より、「コールセンタでは,これまで行っていた業務に加えて,電話による通販の受付業務を新たに実施することになる。」とあることから、P社には電話による通販の受付業務に関する知見がないと読み取れます。仮にP社の人員だけで電話による通販の受付業務を開始するとなると、そのための設備整備、管理体制の構築、従業員の訓練等に時間が掛かることが予想されます。コールセンタ業務を受託している企業は、コールセンタ業務に習熟した人材、コールセンタの運営ノウハウを有しているので、これらを活用すれば早期に電話による通販の受付業務を開始できます。これがP社にとってのメリットとなります。

    ∴電話による通販の受付業務を開始

  • 現在のP社コールセンタの業務は次のように説明されています。
    • 顧客からの照会・要望・クレームを受け付けているものの,通販は行っていない。
    • コールセンタで得た情報は,一定期間ごとに取りまとめて仕分けされ,必要に応じて,各担当部署に伝達される。
    設問に「コールセンタで得た情報を活用するための活動」とあるので、その情報とは「顧客からの照会・要望・クレーム」であるとわかります。

    コールセンタには顧客への応対のほかにも、得られた情報を組織内にフィードバックし、事業活動に役立てるという機能があります。P社の場合だと、顧客からの情報もとに製品改良を行うなどです。現在は一定期間ごとに顧客からの照会・要望・クレーム情報をまとめていますが、それだけでは積極的にその情報を活用しているとはいえず、重要な情報の伝達が遅れてしまうことが考えられます。コールセンタで得られた情報を十分に活用するためには、情報に優先度を付けるなどして担当部署に迅速に伝達できる仕組みづくりが必要です。

    ∴顧客からの照会・要望・クレームなどの情報の担当部署への速やかな伝達
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