応用情報技術者過去問題 令和3年春期 午後問4

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問4 システムアーキテクチャ

IoT技術を活用した駐車場管理システムに関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。

 K社は,大都市圏を中心に約10万台分の時間貸し駐車場(以下,駐車場という)を所有する駐車場運営会社である。K社が所有する駐車場の"満車","空車"の状況や課金状況などは,K社が構築した駐車場管理システムで管理している。K社では,5年後には所有する駐車場を約20万台分に拡大する計画に加え,新規事業の拡大や顧客サービスの向上策を検討することになった。
 K社の経営企画部で,顧客サービスの向上策を検討した結果,その一つとして,駐車場の利用状況を表示するスマートフォン向けアプリケーションソフトウェア(以下,駐車場アプリという)を開発することになった。

〔駐車場管理システムと駐車場アプリの仕様の検討〕
 経営企画部のLさんは,駐車場アプリを実現するために,既存の駐車場管理システムを拡張することを検討した。拡張する機能仕様とシステム要件の案の一部を表1に,駐車場アプリの仕様案の一部を表2に示す。
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 Lさんは,表1及び表2の案を実現するために,パーキングスロットに設置する,センサを内蔵した通信端末(以下,端末Pという)の仕様を検討した。端末Pの仕様案の一部を表3に示す。
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〔無線通信方式の検討〕
 Lさんは,表3に示す無線通信方式の候補から,表1の項番4の仕様を実現するために適切な方式を検討した。検討の過程を次に示す。

 LTEは,携帯電話やスマートフォン向けのモバイル通信サービスで利用されている方式であり,全国47都道府県で利用可能である。
 LPWAは,通信速度はaが,bの通信方式として,IoT向けに低価格のサービスが普及している。LTEを活用したLPWA(以下,LTE-M方式という)を利用すれば,LTEと同様に全国47都道府県で利用可能である。
 Wi-Fi及びBLEは,PCやスマートフォンの通信に利用されることが多い通信方式である。BLEもbという特徴がある。しかし,いずれも,端末Pからクラウドサービスにデータを送信するために,別の無線通信や有線回線などと組み合わせる必要がある。

 検討の結果,端末Pの通信方式にはLTE-M方式のLPWA通信サービス(以下,LPWA通信サービスという)を採用することにした。

〔LPWA通信サービスの選択〕
 端末Pで利用可能なLPWA通信サービスでは,月間に使用できる最大データ通信量に応じて異なる料金プランが用意されていた。候補となったLPWA通信サービスの料金プランを表4に示す。
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 表2の各仕様を満足させるために,端末Pからクラウドサービスにデータを送信する頻度は,パーキングスロットの利用状況が変わるごととし,1分以内に送信することを基本とした。ただし,利用状況が長時間変わらない場合も環境情報の更新のために定期的に送信する。なお,1台の端末P当たりの送信回数は,1日30回を上限とした。また,使用するデータ送信方式は,表3の候補からHTTPを用いることにした。この仕様を満たした上で,HTTP通信での通信料金が最も安くなる①LPWA通信サービスの料金プランを選択した。

〔クラウドサービスへのデータ蓄積とサービス提供〕
 表2の各仕様を実現するために,全てのパーキングスロットに端末Pを設置して,〔LPWA通信サービスの選択〕で検討した頻度でクラウドサービスにデータを送信し,蓄積することにした。
 一方,駐車場アプリからクラウドサービスへのアクセスでは,利用者のスマートフォン1台当たりに必要な帯域は64kビット/秒と想定した。
 結果として,クラウドサービスで使用する②通信帯域は,端末Pからのデータ収集と駐車場アプリ利用者のスマートフォンからのアクセスが同時に発生することを想定して,確保することにした。
 また,クラウドサービスの③保存領域は,5年後に計画されている拡大した駐車場の台数でも,環境情報が最大5年間保管できるように,確保することにした。

〔データ送信方式の検討〕
 LPWA通信でエラーが発生した期間に,送信すべきデータが欠損することを避けるために,端末Pに送信すべきデータを蓄積し,現在のデータを送信する際に,過去に送信できなかったデータを選別して,同時に送信することにした。送信エラーが続き,送信データ量の累積がcを超えないように,新しいデータから順に選んで送信することにした。
 また,〔LPWA通信サービスの選択〕で検討時に想定したHTTPでは端末Pからクラウドサービスに送信するデータが暗号化されないことから,データ送信方式には,表3に示した候補から,④暗号化通信時に最も通信量の少ない方式を採用することにした。

 Lさんは,検討した実現方式を上司に説明し,承認された。

設問1

本文中のabに入れる適切な字句を,解答群の中から選び,記号で答えよ。
a,b に関する解答群
  • 遅い
  • 省電力
  • 大容量
  • 速い

解答入力欄

  • a:
  • b:

解答例・解答の要点

  • a:
  • b:

解説

LPWA(Low Power Wide Area)は、LP:LowPower=省電力、WA:WideArea=広範囲の名称の通り、省電力・広範囲を特徴とする無線通信規格の総称です。伝送速度は遅いものの、Wi-fiやBluetoothが届かない数キロメートルから数十キロメートル間の通信をカバーします。

IoT(Internet of Things)では、各所に配置された個々のIoTデバイスが内部バッテリーのみで長期間続けて稼働することになるので、バッテリー消費をいかに抑えるかがポイントになります。またIoTデバイス同士は、制御や情報取得のためにお互いに通信することになりますが、この個々の通信はそれほど大きいデータ量ではないので、通信回線の高速性は重要ではありません。
これらの特徴を踏まえると、IoTネットワークには省電力、低速、広範囲のネットワークが適していることになります。LPWAは、小型デバイスを多数配置した広範囲のIoTネットワークの運用を実現する手段として利用されています。

したがって、[a]には「遅い」、[b]には「省電力」が当てはまります。

なお、本文中に登場するBLE(Bluetooth Low Energy)は、無線通信規格Bluetoothの一部で、その名前の通り低消費電力に特化した通信モードのことです。

a=ア:遅い
 b=イ:省電力

設問2

〔LPWA通信サービスの選択〕について,(1),(2)に答えよ。
  • パーキングスロットの利用状況が変わった際に,端末Pからパーキングスロットの利用状況情報及び環境情報をクラウドサービスにHTTP通信で1分以内に送信するのに必要な最低限の通信速度は何ビット/秒か答えよ。答えは小数第2位を四捨五入して小数第1位まで求めよ。
  • 本文中の下線①で,選択したLPWA通信サービスの料金プランの名称を,表4の料金プランの名称で答えよ。

解答入力欄

    • ビット/秒

解答例・解答の要点

    • 266.7
    • プランC

解説

  • 表3「端末Pの仕様案」より、端末Pからクラウドサービスに送られる利用状況情報及び環境情報のデータサイズは1回当たり2,000バイトとわかります。

    2,000バイトのデータを1分(=60秒)以内に転送するために必要な速度(ビット/秒)は、

     2,000バイト=16,000ビット
     16,000ビット÷60秒=266.666…
    (小数第2位を四捨五入)266.7ビット/秒

    ∴266.7

  • 各プランには月間の最大データ通信量の制約があるので、新システムにおいて端末Pからクラウドサービスに送信されるデータの上限を計算します。
    • 1回のデータ通信量 … 2,000バイト
    • 1日当たりの最大送信回数 … 30回
    1台の端末P当たりの1日の最大データ通信量は、

     2,000バイト×30回=60,000バイト=60kバイト

    1カ月30日とすると、1月当たり通信データ量は、

     60kバイト×30日=1,800kバイト

    このデータ通信量をカバーするには、月間データ通信量の上限が2,000kバイトである「プランC」を選択するしかありません。

    ∴プランC

設問3

〔クラウドサービスへのデータ蓄積とサービス提供〕について,(1),(2)に答えよ。
  • 本文中の下線②で,クラウドサービスのHTTP通信で必要となる最低限の通信帯域を解答群の中から選び,記号で答えよ。なお,対象とする通信は,端末Pからのデータ収集と駐車場アプリ利用者のスマートフォンからのアクセスだけとし,それ以外の通信は無視できるものとする。
  • 本文中の下線③で,環境情報を保存するためにクラウドサービスで必要となる最低限の保存領域は,何Tバイトか答えよ。答えは小数第2位を四捨五入して小数第1位まで求めよ。
解答群
  • 26.7Mビット/秒
  • 53.4Mビット/秒
  • 64.0Mビット/秒
  • 90.7Mビット/秒
  • 117.4Mビット/秒
  • 128.0Mビット/秒

解答入力欄

    • Tバイト

解答例・解答の要点

    • 21.9

解説

  • ①端末Pからのデータ収集、②駐車場アプリ利用者のスマートフォンからのアクセスに分けて考えます。

    ①端末Pからのデータ収集
    端末Pはパーキングスロットと同数の20万台用意され、その各々について設問2(1)で求めた266.7ビット/秒の帯域が必要なので、

     266.7ビット×20万台=53.34Mビット/秒

    ②駐車場アプリ利用者のスマートフォンからのアクセス
    スマートフォン1台当たりに必要な帯域は64kビット/秒、表1より最大1,000の駐車場アプリからの同時アクセスを可能とするので、必要な通信帯域は、

     64kビット×1,000台=64Mビット/秒

    この2つを合計した値が、クラウドサービスのHTTP通信で必要となる通信帯域です。

     53.34Mビット+64Mビット=117.34Mビット/秒

    したがって、仕様を満たすための最低限の通信帯域は、117.34Mビット/秒以上であり、かつ、最も小さい「オ」の117.4Mビット/秒となります。

    ∴オ:117.4Mビット/秒

  • 保存領域は、環境情報は最大で5年間保存できるように確保します。計算に必要な条件は以下の通りです。
    • 表1の項番2より、端末Pからの通信1回当たりの環境情報データのサイズは最大で2,000バイト
    • 1台端末P当たりの1日の最大送信回数 … 30回
    • 端末Pの台数 … 20万台
    • 5年間の暦日数 … 365日×5=1,825日(うるう年除く)
    したがって必要となる最低限の保存領域は、

     2,000バイト×30回×20万台=12Gバイト
     12Gバイト×1,825日=21.9Tバイト

    ∴21.9

    ※最大2回のうるう年を加えて1,827日で計算すると21.924Tバイトで、小数第2位を四捨五入した結果は同じとなります。

設問4

〔データ送信方式の検討〕について,(1),(2)に答えよ。
  • 本文中のcに入れる適切な字句を15字以内で答えよ。
  • 本文中の下線④で採用したデータ送信方式を答えよ。

解答入力欄

    • c:

解答例・解答の要点

    • c:月間の最大データ通信量 (11文字)
    • MQTTS

解説

  • cについて〕
    端末Pに送信すべきデータを保存するという仕様から、端末Pに保存可能なデータ量の上限である2Gバイトが当てはまりそうな気がします。しかし、よく考えてみると、2,000バイトのデータを1日30回送信したとしても60kバイト、2Gバイトの容量を使い切るには33,333日(およそ90年)掛かることになります。しかも、2,000バイトは通信プロトコルの制御情報を含めたサイズですから、正味のデータ量はもっと少ないはずです。端末Pのデータ領域は十分過ぎるほどの大きさですので、これを超えた場合を考えるというのは現実的ではありません。

    "送信データ量の累積"という部分に注目すると、LPWA通信サービスの月間の最大データ通信量が関係していることがわかります。設問2(2)で計算した通り、1台の端末Pの1月当たり通信データ量は最大1,800kバイトであり、プランCの最大通信量2,000kバイトと比較して200kバイト(データ送信100回分相当)しか余裕がないためです。
    送信エラーが続くと、送信できなかったデータが端末Pに蓄積されていきます。その後、現在のデータを送信するときに、何も考えずに送信できなかったデータ全部を再送信してしまうと、プランCの最大通信量に達し、その月は通常のデータ通信を制限されてしまうことになります。このため、月間の送信データの累積が「月間の最大データ通信量」を超えない範囲で、送信できなかったデータを再送信する必要があります。具体的には再送信するデータ量を、月間の最大データ通信量から"月の残り日数×1日当たりの最大通信量"を引いたサイズまでに制限しなければなりません。

    c=月間の最大データ通信量

  • 表3を見ると、端末Pではデータ送信方式を、HTTP、HTTPS、MQTT、MQTTSの4つから選べることがわかります。下線④では暗号化通信を行うという条件があるので、TLSで暗号化を行うHTTPS・MQTTSのいずれかを選択することになります。

    MQTT(Message Queueing Telemetry Transport)は、短いメッセージを頻繁にやり取りすることに特化したシンプルかつ軽量のプロトコルで、IoTネットワークやモバイルアプリケーションでの活用が期待されています。MQTTはパブリッシュ(送信側)とサブスクライブ(受信側)の間をMQTTブローカー(メッセージ配信サーバ)が取り持つという通信モデルになっていて、HTTPと比較して、一対多や多対多の通信もできる、ヘッダサイズが最小で2バイトと小さい、シンプルな通信シーケンス、送信したメッセージがサーバで保持されるなどのIoTネットワークに適した強みがあります。
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    今回は通信量の少ない方式を選ぶことになるので、HTTPSではなく「MQTTS」が適切となります。IoTネットワークにおいては、MQTTSを採用することでHTTPSを使用するよりも通信量を10分の1程度に抑えることが可能です。

    ∴MQTTS
問4成績

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